むし歯になったら、残念ながら自然に治ることはなく、少なくとも現時点では、むし歯の部分を削って治す他、治療法はありません。
小さなむし歯であれば、そこだけ詰めて治せるのですが、むし歯がある程度大きくなってしまうと被せ物を装着して治す治療になります。
歯の被せ物には、どのようなタイプの被せ物があるのでしょうか。そして、どのように選べばいいのでしょうか。
今回は、歯の被せ物について解説します。
被せものの種類
被せ物は、保険診療の適応を受けているタイプとそうでないタイプにわけられます。
保険診療
◆インレー
インレーとは、小ぶりの金属製の詰めもののことです。
歯のごく一部に限られたむし歯の治療に用いられます。
基本的に歯の神経を取り除いた後の歯には用いられません。
◆5分の4冠
奥歯を単純な四角柱として捕らえると、見えている面は全部で5面となります。
5分の4冠とは、頬側以外の4面に被せる金属製の被せ物のことです。
後述する全部鋳造冠と比べると外れやすい傾向はありますが、表側に歯の白い色の部分が残るので、目立ちにくいという利点があります。
◆全部鋳造冠
全部鋳造冠とは、いわゆる銀歯のことです。
歯の全面を銀色の金属製の被せ物で覆います。
銀色なので目立ちますが、大きなむし歯の場合は、この方法にならざるを得ません。
◆硬質レジン前装冠
前歯の治療で全部鋳造冠を装着すると、前歯が銀色でぎらぎら光って、非常に不自然になってしまいます。そこで、表側の金属部分の上にコンポジットレジンとよばれる白色のプラスチックを貼り付けて目立ちにくくした被せ物が考案されました。これを硬質レジン前装冠とよんでいます。
硬質レジン前装冠は、前歯部に限って使用することが認められています。
被せた当初は白色で目立ちにくいのですが、年月が経つと色が変色して黄色味がかってくるという欠点があります。
なお、裏側にはコンポジットレジンは貼り付けられていません。銀色の金属が露出しています。
◆CADCAM冠
CADCAM冠は、第一小臼歯と第二小臼歯、第一大臼歯に認められるようになった新しいタイプの被せ物です。
従来の被せ物は歯科技工士がひとつひとつ手作りで作っていましたが、CADCAM冠は、コンピュータが自動的に作り上げるという点で、全く異なる新しいタイプの被せ物といえます。
保険診療のCADCAM冠は、コンポジットレジン系の素材から削り出して作られます。
白い被せ物として仕上がりますから、目立ちにくく、金属部分が全くないので金属アレルギーのある方でも安心して使ってもらえます。
しかし、強度が弱く欠けやすいという欠点があります。保険診療での導入当初は、これに加えて外れやすいという欠点もありましたが、近年は接着剤が改良されてきたため、初めの頃よりは外れにくくなっています。
自費診療
◆陶材焼付鋳造冠
硬質レジン前装冠と同じく、内面は金属で出来ていますが、表面をセラミックで仕上げています。被せ物の内側の歯茎の縁に少し金属が見えている以外は、全て白いセラミックで覆われているため、見た目が非常にきれいです。
硬質レジンとは異なり、セラミックは何年経っても色が変化することはありません。しかも、本物の歯の様に、表面が透明色でコーティングされているので、自然な歯に近い仕上がりになっています。
◆オールセラミッククラウン
オールセラミッククラウンは、文字通り全てセラミックで作られた被せ物です。
陶材焼付鋳造冠では内側は金属で補強していましたが、オールセラミッククラウンではジルコニアというセラミックで補強しています。
金属は光を通しませんが、ジルコニアはそうではありません。そのために、陶材焼付鋳造冠よりも透明感が優れており、自然な歯に限りなく近い仕上がりになります。
また、金属をいっさい使わないため、金属アレルギーのある方でも安心して装着できます。
◆CADCAM冠
自費診療でもCADCAM冠はあります。
自費診療の場合は、セラミックで作られています。
保険診療のCADCAM冠は、コンポジットレジン系の素材で出来ていますので、強度が弱く外れやすい、見た目も全部鋳造冠よりはましという程度で、それほど自然な仕上がりではありませんが、セラミックでできたCADCAM冠は違います。
強度も優れている上に、見た目も非常に自然な仕上がりになっています。
なにより、製造装置を設置している歯科医院であれば、歯型をとってから数時間で出来上がります。歯型をとった時間によっては、その日のうちに被せ物が完成して、装着できるというスピードの速さが利点です。
◆セラミックインレー
セラミックで作られたインレーです。
セラミックで作っているため、見た目が自然な仕上がりになるのですが、形成がたいへん難しく、外れたりかけたりする可能性が高いという欠点があります。
◆ゴールドクラウン/インレー
いわゆる金歯です。
見た目の自然さでは、セラミックにかないませんが、銀歯よりは目立ちにくいです。
金歯には、セラミックのような硬さがありません。実は、セラミックはたいへん硬いのです。歯よりも硬いという性質を持っています。
セラミックと違い、金は軟らかい金属なので少々強く噛み合わせても、咬み合わせた歯が欠けるおそれがありません。
ですから、食いしばったり、歯ぎしりをしたりするくせがある方でも大丈夫です。
そして、金はアレルギーの原因にならない安全性の高い素材です。金歯なら、金属アレルギーのある方でも使えます。
選び方
保険診療の被せ物にするか、自費診療の被せ物にするのかを選ぶポイントを紹介します。
◆費用
自費診療の被せ物は、やはり高額になります。
たとえば、陶材焼付鋳造冠で7〜12万円、オールセラミッククラウンで10〜15万円にもなります。
一方、保険診療で比較的高価な部類に入るCADCAM冠や硬質レジン前装冠であっても、3割負担の場合で、装着費用や接着費用は別にして、窓口で支払う被せ物の費用は5000円ほどです。インレーならば、部位や形によっては被せ物の支払い金額が1000円に満たないケースもあります。
保険診療と自費診療では、これほどまでに費用に差があるのです。
費用を抑えて治療を受けたい場合は保険診療で受けるといいでしょう。
◆見た目
前歯の被せ物は、保険診療でも白い硬質レジン前装冠で治せますが、仕上がりが人工物のような違和感はどうしても拭えません。
前歯に限らず、奥歯も場所によっては目立ちます。にこっと笑ったときに、キラリと銀歯が光ってしまうかもしれません。
被せ物を入れた後に、自然な美しさのある歯にしたいと願う方には、自費診療のセラミック製の被せ物がいいでしょう。
◆早く治したい人
忙しい、治療に通える日が限られている、いついつまでに治したい、そんな方には、セラミック製のCADCAM冠がおすすめです。
もし、これの製造装置を設置している歯科医院なら、歯型をとったその日に被せてしまうことも夢ではありません。
まとめ
歯の被せ物は、保険診療と自費診療で全く異なっています。
保険診療なら費用を安く抑えることが出来ますが、より自然に美しく治したい方には自費診療の被せ物の方が適しています。
もちろん、保険診療の方が安いからといって、「安かろう悪かろう」いうことはありません。保険診療の被せ物でもしっかり噛めますし、むし歯や歯周病になりやすいということもありません。
費用と見た目のどちらを重要視するかで、お選びになるといいでしょう。
※上記コラムに関するご質問・ご相談は、虎ノ門(神谷町)の歯科、岡田歯科クリニックへご連絡下さい。