骨粗鬆症の治療薬による顎骨壊死について

投稿日:2018年8月10日|カテゴリ:院長コラム
骨粗鬆症

骨は加齢的に骨密度が低下したり、骨そのものが劣化したりします。この現象を骨粗鬆症と言います。

骨粗鬆症になると骨折を起こしやすくなり、特に高齢者では足腰の骨折が寝たきり状態につながりかねず、問題視されてきました。 そんな中、骨粗鬆症を治療する薬剤であるビスホスホネートという薬が開発されました。 この薬を使えば骨粗鬆症を治せるため、寝たきりを予防する点において非常に画期的でした。 そんな良い薬なのですが、ビスホスホネートを使っている患者さんの抜歯をすると、顎の骨が壊死してしまう恐れがあることが判明しました。

今回は、骨粗鬆症の治療薬による顎骨壊死について紹介します。

ビスホスホネート系薬剤顎骨壊死とは

◆骨のリモデリングについて

骨は、新しい骨が作られる一方、古い骨を取り除くという新陳代謝を常に繰り返しています。れを骨のリモデリングといいます。

骨の生成力が低下し、新しい骨が生まれにくくなるのが骨粗鬆症の原因です。

◆ビスホスホネート製剤の働きと顎骨壊死

ビスホスホネート系薬剤は、古い骨を取り除く働きをしている破骨細胞の働きを低下させることで骨稜が減少するのを防いでいます。

抜歯などの侵襲によって顎骨に感染が生じると、感染を起こした骨を破骨細胞が排除して骨が壊死を起こさずに治っていくと考えられています。ところが、ビスホスホネート系薬剤を投与することによって破骨細胞の働きが低下するため、感染を起こした骨が残存することになり、顎骨壊死が起こるというのが有力な説です。

最近では、ビスホスホネート系薬剤以外の骨吸収を抑える薬剤によって顎骨壊死が起こる症例が認められるようになったため、名前が『骨吸収抑制薬関連顎骨壊死(ARONJ)』に変わってきました。なお、アメリカでは薬剤関連顎骨壊死(MRONJ)と呼ばれています。

骨粗鬆症

診断基準

現在はアメリカ口腔顎顔面外科学会の指針に基づいて、以下のような状態を全部満たせば、ビスホスホネート系薬剤顎骨壊死とみなされます。

◆骨の露出が、8週間以上続いている。

8週間に満たなければ、顎骨壊死とはみなされません。

◆顎顔面部への放射線治療が行われたことがないこと。

放射線治療が行われたことがあれば、放射線性顎骨壊死の可能性があるからです。

◆ビスホスホネート系薬剤の治療歴があること。

※なお、ヨーロッパでは異なる基準が設けられているそうです。

骨粗鬆症

治療法

現在のところは、確実な治療法は確立されていません。下記のように症状に応じて種々の治療法が行われています。ビスホスホネート系薬剤を中止しべきかどうかは、見解が分かれているところです。

◆保存的治療法

保存的治療法は、マクロライド系抗菌薬を長期投与、高圧酸素療法、口腔ケアなど、手術を伴わない治療法のことです。

顎骨壊死を起こしても必ずしも痛みのような自覚症状が起こるとは限りません。痛みがなく日常生活において問題が少ないと考えられる場合に選ばれます。

◆外科的治療法

これは、顎骨壊死を起こした部位の骨を、周囲の健全な部分も一部含めて取り除いてしまう手術のことで、いわゆる顎骨切除術です。取り除いてしまうことで、骨壊死が広がるのを防ぐのが目的です。痛みが激しいなど、日常生活に支障を来すような場合に行なわれます。

そこまで広範囲にしなくても、腐骨という分離した骨のみを摘出する手術方法もあります。

顎骨壊死の予防法

確実な予防法は、確立されていませんが、飲み薬タイプのビスホスホネート系薬剤については、3年以上服薬経験がある、もしくはそれ未満でもステロイドを使っているなどリスクが高い場合、抜歯の3か月前から3か月後までの期間、ビスホスホネート系薬剤の服用を中止することが勧められています。

骨粗鬆症

注射薬タイプのビスホスホネート系薬剤については、中止することで顎骨壊死を予防できるとは考えにくいため、中止することは勧められていません。

また、抜歯の際に、抜歯した歯の周囲の骨を一層除去し、抜歯したところを縫合して完全に封鎖すれば顎骨壊死を防げるという研究者もいますが、こちらも確実に予防できるとは限りません。 いまのところは、骨粗鬆症の治療を開始する前に、きちんと歯科治療を受けておくことが一番の予防法と言えるでしょう。

もし、骨粗鬆症の治療が予定されているのなら、その前に歯科医院を受診して、お口の状態をチェックしてもらうようにしてください。

抜歯しなくても起こる?

今までは、ビスホスホネート系薬剤を使っている状況下で、歯科医師が悪い歯を抜歯することで起こると考えられてきました

しかし、近年抜歯をしていなくても発症した症例が見つかっています。 抜歯をしていなくても発症した症例は、歯周病などの感染症を起こしていることが多く、それが原因で、顎骨壊死を生じたのではないかと考えられています。

まとめ

ビスホスホネート系薬剤は、骨粗鬆症を防ぐ有力な薬剤なのですが、歯科の領域においては顎骨壊死を起こすリスクが高い薬剤でもあります。

一度顎骨壊死を起こしたときに、治療する方法については、現在確立しているとは言えない状況にあります。ですので顎骨壊死を起こさないようにするのが一番の対策と言えます。

そのためには、食後の歯みがきを歯と歯の間までていねいにすると同時に、歯科医院に定期的に通い、虫歯や歯周病の治療を受けて、お口の状態を良好に保っておくことが大切です。

骨粗鬆症

 

※上記コラムに関するご質問・ご相談は、虎ノ門(神谷町)の歯科岡田歯科クリニックへご連絡下さい。